「今も困っている最中です」演出・吉田鋼太郎『ヘンリー五世』インタビュー

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主演・松坂桃李×演出・吉田鋼太郎というタッグで届ける彩の国シェイクスピア・シリーズ『ヘンリー五世』が2019年2月に上演されます。

彩の国シェイクスピア・シリーズとは、芸術監督を務めた故・蜷川幸雄によってシェイクスピア全37戯曲の完全上演を目指す、1998年から始まったシリーズ。今回の『ヘンリー五世』は2代目芸術監督に就任した吉田鋼太郎の演出2作目、シリーズ第34弾となります。

どんな作品になるのか、吉田鋼太郎さんに直撃しました!

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――今作『ヘンリー五世』はどのようにつくろうと思われていますか?

 『ヘンリー五世』は歴史劇で、僕も上演されたのは一度しか観たことがないんですよ。しかもそれが、僕が25歳の時にイギリスで。しかもそれがケネス・ブラナー(王立演劇学校を首席で卒業し、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーに参加したシェイクスピア俳優としても有名な人物。1989年公開の映画『ヘンリー五世』ではアカデミー監督賞・主演男優賞にノミネートされた)のデビューイヤーで。そのときは「すごい役者が出てきたな!」と思い、芝居自体はあまり印象が無いんです。でもシェイクスピアって本を読んだだけだとよくわからないので、具体的なイメージがなかなか持ちづらくて。前作(第33弾『アテネのタイモン』'17年12月上演)をやっているときから常に頭の中には「次は『ヘンリー五世』、どうすればいいんだ」ということはあるのに、なかなかイメージがまとまらず。今も困っている最中です(笑)。

――前作の時点で『ヘンリー五世』をやろうと決めていたのはどうでしてですか?

 '13年に『ヘンリー四世』をやっていますよね。それでハル王子を演じていた桃李がヘンリー五世役をやればいいなと思ったんですよ。

――『ヘンリー五世』は、第27弾『ヘンリー四世』('13年)のその後を描いた作品ですし、松坂桃李さんは今回、当時演じたハル王子の未来であるイングランド王ヘンリー五世を演じますね。

 はい。桃李のハル王子がヘンリー五世になるのに、この"6年"というのはいい感じの時間だなと思っています。

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――『ヘンリー四世』で共演して、松坂さんのどこに魅力を感じましたか?

 彼はシェイクスピアをやるのが初めてで、もちろん苦労していた部分もあるんですけど、最終的にシェイクスピアの台詞を"自分の言葉"として喋っていて、そこにびっくりした覚えがあります。シェイクスピアの台詞って、言葉も難しいし、言い回しもややこしいので、つい朗誦になっちゃって自分の血と肉が通わなかったりするんですけど。そこをクリアして自分の言葉で喋っていた。これはなかなか稀有な俳優なんだなと思いました。それに、身長ということでなくスケールが大きいんですよ。今回はイギリス全土を背負って立つヘンリー五世という役で、芝居といえども俳優の中にそのスケールがないと嘘っぱちになっちゃう恐れがある。それがある役者がどれだけいるかというと、意外とこれがいない。でも桃李はできるなって気がしましたね。

――物語としてはどのようなところが魅力でしょうか?

 基本的にはイギリスの史実なのでよっぽどイギリスの歴史に興味がある方じゃない限り、観ても面白くないのではと思われがちなのですが、やはりそこはシェイクスピア。史実をただ再現しているだけではなく、そこに関わってくる人たちの悲喜劇があります。この作品は登場人物が多くて、軸はヘンリー五世ですが、さまざまな人たちがほぼ均等の役割で出てくる芝居なんです。つまり兵隊だったり、居酒屋のおかみさんだったり、群衆だったり......そういう人たちのドラマでもある。そこを生かしていければなと思っています。歴史なんて見せてもしょうがないですからね。人間の悲喜劇を見せられればと思います。

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――難しい芝居ですか?

 群像劇というか群衆劇なところがあって、1シーン、1シーンが割と散文的なんですよね。主線はつながっているんだけど、そこに絡んでくる人たちが路上で言い争いをしたり、飲み屋で喧嘩になったり、女を口説いたりっていう。そのシーンをひとつずつ本当に面白く成立させていかないと芝居全体がつながっていかない作品ですね。『ハムレット』ならハムレットを追っていればいいんです、多少芝居がダメでも(笑)。でも『ヘンリー五世』はそういうわけにはいかない。もちろんヘンリー五世が演じなければいけない本筋があるのですが、周りにいる人間たちがそれを盛り立てていける芝居をしないと成立しないので。それが今回一番難しいです。

――そこには何が必要になってくるのでしょうか?

 そういうシーンをつくるには、(俳優に)芸がいります。だから演出家が「こうやってくれ」と言うことに対して、俳優がどれだけ対応してくれるか。もちろん対応してくれるであろう俳優さんを選んでいるのですが、行き止まりがないんですよ、シェイクスピアは。「もっとやれる」「もっとやれる」っていう本だし、もっとやるほど面白くなるので。だから、どこまで突き詰めてやればいいのかなというところですね。それを毎日やってるとへとへとに疲れるだろうと思いますが、なるべく疲れたくない!

――(笑)

 でもやっぱり疲れるまでやらないと面白くできないので。今回一番大変なんじゃないかなという気がしております。

シェイクスピアの中でも。

 『ロミオとジュリエット』のように劇的なストーリーがあるわけでもないですから。いかに登場人物たちを生き生きと演出できるかにかかっているので。

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――そのなかで今回、吉田さんが説明役(コーラス)をやろうと思われたのは。

 ひとつだけプランがあって、それをやるためには俺がコーラスをやらないといけないんですよ。それは『ヘンリー五世』をやると決まってたときから考えてたことなんですけど......完全に秘密です!(笑)

――では本番を楽しみにしています!

 『ヘンリー五世』はあまり耳慣れない題名で歴史の教科書に出てくるような話に思われるかもしれませんが、ヘンリー五世という王様を主人公に、すべての階層すべての職業と言えるくらいさまざまな人たちが繰り広げる、笑いや涙や感動が詰め込まれたお芝居です。騙されたと思って(笑)、ぜひ一度観に来てください。

公演は2019年2月8日(金)から24日(日)まで埼玉・彩の国さいたま芸術劇場 大ホールにて。その後、仙台、大阪公演あり。

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