TOKYOハンバーグ『夜明け前、私たちは立ち上がる。』座談会

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小林大輔  永田涼香
大西弘記  鮒田直也

2011年の震災以降、この題材を取り上げない訳にはいかないと、様々な場所に足を運び、作品を上演してきた劇作家・演出家の大西弘記が主宰するTOKYOハンバーグ。
今回は、The Stone Ageの鮒田直也を脚本に迎え、震災の起こるはるか前、1994年の三重県・芦浜で起こっていた原発計画を巡る住民たちの姿を描く。
ウミガメが産卵にやってくる美しい海岸を持つ芦浜海岸に、原発計画が持ち上がったのは1963(昭和38)年。
奇しくも1994年に大阪で生まれ、2016年よりTOKYOハンバーグに入団し、着実に力をつけてきた永田涼香と、2000年の計画の白紙撤回までにかかった年月、37年と同じ年齢で、2017年、新たにメンバーとなった出演経験豊富な小林大輔。
この4人に、作品にかける思いを聞いた。

自分のこととして想像できるような作品を。

——大西さんのご出身の三重県で実際にあった原発計画を巡る「芦浜闘争」がモチーフになっているとのことですが、なぜこのテーマを選んだのですか?
大西 2011年の震災以降、原発を取り上げた作品は、ぼくらも含めていくつもあったと思うんですけど、それを作るまでの話はないなと気がついて。原発っていうキーワードを、もう聞きたくないっていう人もいるだろうけど、この時代と場所を借りて、意見が違う状況に置かれたとき、さあ、どうするっていうことを考えて続けて行きたくて。こういう事件がありましたよっていう事柄を伝えるだけではなく、そこに生きた人を描くことで、観た人が、自分のこととして想像できるような作品を作っていきたいと考えています。
鮒田 大西さんからこの話を提案されたとき、正直、原発の話とか興味がなかったんです。…これ、30代とかだとようやらないと思うんです。「そんな難しいのようやらん」ということなんですけど。ある程度、年行ってくと、知らないこと知りたがるんですね。だから大西さんがそういうことを言ってくれて、「あ、自分が知らないことを調べて知っていけるっていうのが幸せだな」と。まずそれを思いました。自分の中からは絶対に出ない企画ですし、それで改めてやる意味があると思いましたね。で、調べていくうちに、いろいろ学ばしてもらうことも多かった、というかそれしかなかったです。原発を止めた町は他にもあるんですけど、最長なんですよね。37年間もって。明らかに長いですね。世代が変わってますから。そういうエネルギーの強さがこの町にはあったんだと思います。

物語をやろうとしてる感じではなくなった。

大西 鮒田さんは現地にお一人で取材に行かれましたけど、ぼくらは先月の終わりに8人くらいで行ってきました。そこで見てきたことがすごく強かった。ただこういう事柄、物語をやろうとしてる感じではなくなったなと。
——どういうところなんですか?
大西 さびれた町でした。
鮒田 ド田舎ですね。
——三重県のどのあたりですか?
鮒田 南です。
大西 今は南伊勢町っていう名前になってる元南島町。ぼくの実家は伊勢市なんですけど、伊勢市から車で1時間くらい。でも行ったことなかったですね。
——観光地ではないんですね。
鮒田 人が泳ぐような砂浜や海岸がないんで。観光の目玉になるようなものは特になくて。漁師体験くらい。
大西 魚釣り系ですね。
——漁師の町ということですか?
鮒田 今もそうです。
永田 海が本当に透き通って中が見えるんです。
小林 小魚とかが見えて。
永田 「原発反対」の看板がまだあったりして。町の展望台から見ると、茂った緑の合間に日を浴びてキラキラ光る綺麗な海が広がっていました。

賛成・反対の対立は、今も続いている。

大西 今もまだ「原発反対」のステッカーを貼っている家があって。貼ってある家と貼ってない家、それで賛成派と反対派が一目で分かる。今年、原発計画の白紙撤回から18年目ですけど、残ってるのは、物理的なものだけじゃなくて、当時、賛成と反対で、いがみ合って話さなくなるわけじゃないですか。それが今も続いてるんですよ。
永田 もう、1軒1軒回って見れるくらい小っちゃな町なんですよ。そんな小さな町で、親戚でも友達でも家族でも、賛成派、反対派で、自分の意見と違ったら、もう口も聞かない。そんな感じなんだ、それが本当にこんな小っちゃな町で起きてるっていうことが…。わたしはこの1994年っていう年が、自分が生まれた年で、今回演じる役も同い年で、その人が当時、もしかして生きてたかもしれないということを思うと、とってもすごく、何か、あのー…胸がきゅーとなるというか。どうやって自分の人生と重ね合わせて、行けるんだろうって。

その時、自分がどう思えるか。

小林 取材させていただいた反対派の中心的存在だったご夫婦のお話を聞いてると、今でも戦っている、今でも何一つ色あせていない、続いている問題ということを感じました。死ぬまでこれは変わらないとおっしゃっていて。今回の作品は、ただ原発反対っていう、反対の人たちをクローズアップしたお話ではないし、賛成した人たちにもいろんな理由がある。その人その人、みんなが一つの同じ時間を生きている中で、それぞれの葛藤があると思うので。そこの人間と人間の関係性は普遍的なものだと思うので、それをお客さんに伝えられるように頑張ります。
大西 意見の違いや感じ方、人間関係のいざこざは、誰の日常の中にもいっぱいあると思うんです。その時にどういうふうに対応できるか、自分がどう思えるか。今、演出をしていて、少し自分が嫌になるんですよ、なんか(笑)。「自分、小っちぇなぁ」って。観た人にそう思ってもらえれば、何か心の栄養になるんじゃないかなって。自分に対しての敗北を認めたときに、初めて強がらなくてよくなるじゃないですか、人って。だから、まずは受け入れることだなって。そういうものを形にしようと今、踏ん張っているところです。

【プロフィール】
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鮒田直也(前列右)
大阪出身。大阪シナリオ学校で学んだ後、1998年大阪でThe Stone Ageを旗揚げ。2010年から上京し、活動の拠点を東京に移す。日々どうしようもない汚れを溜め込んだ切実な人間の怒りを描く“マグマ演劇”に挑戦中。

大西弘記(前列左)
三重県伊勢市出身。2006年、自らの作品を上演するために、TOKYOハンバーグを立ち上げる。近年、外部公演への脚本提供・演出なども手がけている。

永田涼香(後列右)
1994年大阪府出身。中学時代に演劇部、高校では女子サッカー部。高校卒業後、桐朋学園芸術短期大学に入学。卒業後はフリーの役者として活動後、2016年、TOKYOハンバーグに入団。

小林大輔(後列左)
1980年長野県出身。大駱駝艦白馬村野外公演、龍昇企画+温泉ドラゴン合同企画、ハイリンドなど多くの舞台に出演後、2017年、TOKYOハンバーグに入団。趣味はヨガ。

〈公演情報〉
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TOKYOハンバーグ+The Stone Age ブライアント合同企画
『夜明け前、私たちは立ち上がる。』
脚本◇鮒田直也

演出◇大西弘記

出演◇永田涼香 小林大輔(以上TOKYOハンバーグ) 内谷正文(FRANKAGEcompany) 橘麦(e-factory) 谷沢龍馬(スタッフ・ワン) 徳永梓(ecru) 荻野貴継 吉田由布子((同)現代) 竹井京子 野村咲 上田尋 高須誠 宇鉄菊三(tsumazukinoishi)
●5/16~20◎サンモールスタジオ


【取材・文・撮影/矢崎亜希子】


『真夜中の弥次さん喜多さん』三重
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