心の深いところに届くミュージカル『In This House~最後の夜、最初の朝~』 演出家・板垣恭一インタビュー

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人生の晩年を迎えつつある夫婦と、2人で生きていく未来に迷い悩む若い男女が、ある大晦日の夜に「この家」で出会う。そして明日に進むための選択をする姿を描くミュージカル『In This House~最後の夜、最初の朝~』が、東京芸術劇場シアターイーストで、4月4日から本邦初演の幕を開ける。(15日まで)
岸祐二、入絵加奈子、綿引さやか、法月康平という魅力的なキャストと共に、この深い物語を紡ぎ出すのは、文豪作品からミュージカル、さらに映像まで、ジャンルを超えて活躍する演出家、板垣恭一。
本作では日本語上演台本・訳詞も手掛ける彼が、作品の魅力、そして演劇界への想いを語ってくれた「えんぶ4月号」の記事を別バージョンの写真とともにご紹介する。
 

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そぎ落とされた表現が
映し出すファンタジー性

──2組の男女の邂逅を描いた深い作品ですが、今感じている作品の魅力は?
少人数で、人間の心の細かい襞に入っていけるのが一番魅力的なところですね。フライヤーにも書かれていますが、短編小説のような凝縮された世界が、ストレートプレイではなくミュージカルになっているのが面白いです。やはりミュージカルであることによって、お客様にも音楽に身を任せて、過度に深刻にならず、どこか楽な気持ちで観て頂けるものになっている。心の深いところに迫る物語とミュージカルの表現とが掛け合わされた作品は、実はたくさんあると思うのですが、あまり上演されてきていないので、良い作品と出会えたなと。お芝居を観る方が小説を読まない訳ではないと思うし、パーソナルな時間に自分に深くもぐっていくことは、皆さんなさっていると思うので、それが劇場でも可能になる作品ではないかと思います。
 
──確かにミュージカル・ナンバーで表現されることで、辛辣な会話に軽やかさが加わったりしますよね。
口論が歌になっていて、しかも後半明るい曲調になったりと、とても考えられた仕掛けがあるので、決して重い話になっていないのがいいなと。
 
──そういう作品を具現化するにあたって、どんな演出プランが?
シンプルで、象徴的な装置を使います。東京芸術劇場シアターイーストというフリーな空間での上演なので、袖幕を使わずに、剥き出しの舞台に柱だけが立っている中で、4人の人間模様を浮き彫りにしていきます。生演奏での上演なので、バンドメンバーも装置の中にいて、そぎ落とした表現をできればと。それには意味があって、これは作品の決定的なオチではないから話しますが、4人の登場人物のうち、老夫婦はおそらく現在に生きている人たちではないんです。だから舞台になる寂れたファームハウスというのは、ひょっとしたら幻なのかも知れない。2組のカップルの時間軸がずれている中、ある大晦日の夜に奇跡的に出会った話なので、ファンタジーでもある作品世界を伝えていきたいと思います。

また観たいと思える舞台を
創る責任がある

──2組のカップルは実力派の面々が揃っていますが、キャストに期待することは?
優れた歌唱力の持ち主ばかりなので、安心感があります。作曲家がグラミー賞も受賞している方なので、耳に心地良いメロディーなのですが、実は難しい楽曲でもあるので、信頼できる人たちなのがありがたいし、口論もあれば和解もある等身大の会話が交わされるので、そこは真っ直ぐに伝えて欲しいですね。
 
──この作品のように小劇場の作品から大作ミュージカルまで幅広く手掛けていますが、その原動力になっているものは?
手を広げすぎとも言われるんだけど(笑)、方法論は多いほど良いと思っているんです。2.5次元の舞台などが隆盛になって、好きな人が出ているからと、初めて劇場に足を運んでくれた人に、また観に来たいと思ってもらえる舞台を創ることは、演劇界にいる人間としての責任だと思っています。その為にはまず楽しんでもらいたいし、面白いと思ってもらえる、お客様の心に残る作品を様々な形で創っていきたい。この作品もミュージカルという手法を使って、心の綾を見せられる面白いものにしますので、是非それを目撃しにいらしてください。

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いたがききょういち〇第三舞台を経てフリーの演出家に。演技講師、映像ディレクターとしても活動。ストレートもミュージカルも多くの作品に携わり、大劇場作品や若手公演の演出での手腕も高く評価される。近作に『ゆく年く・る年冬の陣 師走明治座時代劇祭』、『あさひなぐ』、『グーテンバーグ!ザ・ミュージカル!』、『フランケンシュタイン』など。5~6月『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』が控えている。

〈公演情報〉
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A NEW MUSICAL
『In This House~最後の夜、最初の朝~』
脚本◇サラ・シュレジンジャー マイク・リード 
ジョナサン・バーンスタイン  
作詞◇サラ・シュレジンジャー
作曲◇マイク・リード  
日本語上演台本・訳詞・演出◇板垣恭一 
出演◇岸祐二  入絵加奈子 綿引さやか 法月康平 
●4/4~15◎東京芸術劇場シアターイースト 
〈料金〉6,800円(全席指定・税込) 
〈お問い合わせ〉conSept LLC   info@consept-s.com 
〈公演HP〉 https://www.consept-s.com/in-this-house



【取材・文/橘涼香 撮影/友澤綾乃】



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