山本健介による新作にしずくだうみが音楽で参加 ジエン社『物の所有を学ぶ庭』2月28日から上演


ジエン社『物の所有を学ぶ庭』
『物の所有を学ぶ庭』フライヤーより
 

山本健介率いるジエン社の新作長編『物の所有を学ぶ庭』が2月28日(水)~3月11日(日)に、東京・北千住にオープンしたばかりのアートセンター「BUoY」で上演される。

 
The end of company ジエン社は、2007年に山本健介(作者本介)により活動を開始した演劇集団。脱力と虚無、あるいは諦念といったテーマが作品の根底にあり、「同時多発の会話」や「寡黙による雄弁」といった、テキストを空間に配置・飽和・させる手法を得意としている。2016年には『30光年先のガールズエンド』が岸田國士戯曲賞最終選考にノミネートされた。

そんなジエン社の第12回公演となる『物の所有を学ぶ庭』が、2月28日(水)より、東京・北千住にオープンしたばかりのアートセンター「BUoY」で上演される。

戯曲・演出は、山本健介。出演者は、ジエン社に継続して出演いる、伊神忠聡、蒲池柚番、寺内淳志、中野あき、善積元のほか、オーディションで選抜した鶴田理紗(白昼夢)、湯口光穂(20歳の国)と、遊園地再生事業団の上村聡。広々としたな廃墟のような会場スペースが、閉ざされた庭として大きく生かされる作品となるようだ。

 
また、闇ポップシンガーソングライターのしずくだうみと、藤Snkによるチームが音楽として参加し、静かなエレクトロニカが上演とともに披露される予定。会場ではその音源(CD-R)の先行販売もおこない、後日しずくだうみ出演ライヴでの物販や通販も予定しているとのこと。

しずくだうみ
しずくだうみ

 

STORY

私達は彼らを「妖精さん」と呼んでいるのだけれど、それは正式名称ではなくて。

妖精さんはある時から、一人、また一人と、この世界に、この国に出現し始めた。今、この庭に仮住まいしている妖精さんは二体で、男女で、二人は兄妹らしい。詳しい事はよくわからない。でも、このまま妖精さんがこの街に住むのは、きっと難しいのではないかなと思う。
妖精さんは我々とコミュニケーションは取れるし、頭だっていい。きっと私たちの言っている事は伝わっている。意味としても言葉としても。でもそれでも、妖精さんたちは「所有」という事が、やっぱりわからないみたいで、万引きだったり、無断で人の物を持ち帰ってしまったり、冷蔵庫の中のおやつをパクパク食べたりしてしまう。
だから私は高校教師だった時の事を思い出しながら一つ一つ、まずは「所有」について、妖精さんたちに教えている。
「名前が書いてあれば」と男の妖精さんは言った。

「分かります。物に、名前がついているという事は、触ってはいけないという事が。なぜ触ってはいけないのかまでは、実はわかりません。すみません。でも、そういう文化なのだといわれたら、それは、そうか、私たちにとっては、聖域にある石と同じような存在なのでしょう。名前が書いてある物に関しては、わかりました、私たちは触らないようにします」

私は、触ってもいいんじゃないか、とは思った。名前が書いてある他人の持ち物に、触ることそのものが悪いのではない。他人の所有物を、尊重しないというか、尊重? 所有とは、尊重のことだろうか? たとえば今私が彼の着ている服を、同意なく脱がせて、奪い取って、持ち帰るのはおかしなことだ。いけない事だ。でも、彼の服に、からだに、私の手が触れる事、それは、そんなにいけない事なのだろうか。

「ハリツメさんには、名前が書かれていない場合の、“物の所有”の見分け方を教えてほしいのです。距離の要素が大きい事は、わかりました。手にしている、身につけている、というものほど、それは“所有”されているのだ、と。でも、時に手を離れて、距離が遠くなっているものも、“所有”されている、ということが、分かりません。物が身体から遠くなったら、それは所有ではないものではないのですか?」

そして妖精さんの彼は、私の体を触る。私は、嫌だ、と言わなくてはいけない。妖精さんは悪気なく、敬愛を込めて私の顔や、肩や、胸を触る。

「あなたには名前が書かれていない。あなたは、触ってはいけない、と言う。名前が書かれていないのに、触ってはいけないのは、なぜですか。」

触られながら私は、なぜだろう、なぜかしら、と考える。どう、教えたらいいだろう。
私の体は、私の物だという事。社会的には、もうあの人の物だという事。お嫁にもらわれた、ということ。もらわれた、という私は、物なのか。人ではないのか。人は、物なのか。あの人の物になって、他の誰にも触られてはいけない私が、いまこうして髪を触られている事は、どうしてよくない事なのか。私はそんな事、教えてもらわなかった。学んでこなかった。教えてほしい。知りたい、学びたい。

私は教師だったのに、何でこんなにわからないんだろう。

 

山本健介(「ジエン社」主宰・脚本・演出)

「物の所有」ということと「教える/教わる」という題材で演劇を作ってみたいと思ったのは、単純に僕自身が「物を所有する」という事を、誰かに教わってみたかったから。
そもそも、何で今、持つ者、持たざる者で、格差というものは生まれるのかなとか。いつ、私たちは「所有」する事を知ったんだろう。この感覚は、当たり前のものなんだろうか、と。
あたりまえじゃんか、という事に対して、難癖をつけてみたり、困ってみたいなと思いながら、現在作劇をしています。
脚本を書き、稽古を少しづつ進めれば進めるほど、「所有」が分からなくなる。教えるために、言葉にする過程で、自分で自分の言ってることが分からなくなる。また、「教わる」側は、何が分からないから、分からないのか。なにが分かれば、分かるのか。

ふと、小学校時代の鉄棒を思い出す。
逆上がりのやり方を、教師は教えてくれた。早々に逆上がりができた生徒は、できない組の私たちに教える側に回っていく。出来ない組は少数派になっていき、できる組はより多く、たくさんの言葉で出来ない組の私たちに「教えて」くれる。
だけど、できない。
言葉を尽くして、身体を使って、何時間も、何日も、できる側の集団にいる彼らは私に逆上がりを教えてくれる。けど、できない。
私は、教えられてもできないまま、大人になってしまったんじゃないか。だからこうして、今も、いろんなものを持つことが出来ないままなんじゃないか。

みたいな事を、演劇で表現できたらと、思っています。

 
上演期間中は、ゲストを招いてのアフタートーク(劇後解説)も実施される。

3月1日(木)19:30の回には批評家の佐々木敦氏と主宰・山本健介によるトーク開催が決定。そのほかのイベント詳細は公式サイトで。

 
(文:エントレ編集部)

 

公演情報

The end of company ジエン社 第12回公演『物の所有を学ぶ庭』

【作・演出】山本健介
【出演】伊神忠聡、上村聡(遊園地再生事業団)、蒲池柚番、鶴田理紗(白昼夢)、寺内淳志、中野あき、湯口光穂(20歳の国)、善積元

2018年2月28日(水)~3月11日(日)/東京・北千住「BUoY」

公式サイト
The end of company ジエン社 第12回公演『物の所有を学ぶ庭』

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