山田洋次監督の映画『家族はつらいよ』が舞台となって帰ってくる!

 

山田洋次監督が手がけ、大ヒットした映画『家族はつらいよ』が、2018年1月の初春新派公演として上演されます。 

国民的人気映画『男はつらいよ』シリーズから20年。

山田監督が2016年に新たに手がけた『家族はつらいよ』は、等身大の現代家族のドラマを喜劇タッチで描き、大ヒットした映画です。
その映画を、創始130年の節目にあたる来年の正月興行として、劇団新派が舞台で上演します。 

新派と山田監督とは、小津安二郎監督の名作映画『麦秋』、『東京物語』を新派で舞台化した際、監督が演出を担いました。
今回は、山田監督自身の手がけた映画を新派で舞台化します。
日本人の心や情緒、風情、そして日本語の持つ美しさや優しさを大切に継いできた劇団新派と、くすりと笑ってほろりと泣ける現代家族の物語を山田監督がどう舞台化するのか。 

12月に行われた会見で、山田洋次監督と新派の皆様は次のようにコメントしました。

 

★会見レポート★

 

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山田洋次監督 
初老の夫婦がいて、ある時奥さんの誕生日に夫が何が欲しいと聞くと、ここにハンコが欲しいと離婚届を差し出した。亭主は目の前が真っ暗になったという実際にあった話を聞いて、僕は面白いなと思って。可笑しかったり、深刻だったり。そんなところからこの映画はスタートしました。もともと松竹映画には、昔から家族を描くホームドラマが伝統的にありまして、そうしたドラマを描く監督の代表が小津安二郎さんです。
その小津さんが撮った『東京物語』を下敷きにして『家族はつらいよ』という映画を撮りました。もし、この作品を舞台化するのであれば、家族のような劇団である"劇団新派"をおいて他にはないと思っておりましたので、(舞台化の)提案を受けた時には、「喜んで。ぜひ新派でお願いします」と申し上げました。 
(現実の)新派もたくさん問題を抱えていて、そこにもドラマがあるだろうと思います。 
ちょっと笑えないような話ですが、そこを家族に置き換えて、滑稽な笑いに変えて、観劇後にお客さまに「そうか、これは他人事じゃないな〜」とちょっと涙が出るような、そんな芝居になればと思っています。

 

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水谷八重子(母・平田富子役)
明治21年に生まれた新派は、政治批判をするために小屋掛芝居をしたと聞いております。今、"平成"のお芝居が生まれようとしております。明治に生まれた新派は(上演当時は)現代劇でしたが、今では"古典"と呼ばれるようになりました。平成に時代をとったお芝居をやるのは今回が初めてではないかと思います。 
劇団というのは、まさに家族でございます。50人に満たない家族ですが、喧々諤々。ですがそこを言い合えるところが私たち"家族"の嬉しさでもあります。 
お正月に、もう一度家族の結束を固められると信じております。
このお芝居では不思議な女を演じます。 
私の望みには450円お金がかかります。戸籍謄本を取るために。
そんな不思議な女ですが、私らしく演じてお正月を迎えたいと思います。
観客が大勢詰めかけてくださると、私たち"家族"は本当にハッピーになれるんです。

 

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波乃久里子(小料理屋の女将・加代)
私は、秋以降新派をおやすみしておりましたが、今日こうして(会見に出席して)本当に嬉しいです。 
それも、大好きな先生の作品で、大好きな三越劇場で、お正月が迎えられるということはありがたいと思っております。 
新派は昔からそこにあった事件を基に舞台を作って来ました。
今回は、先生がそこにあったことをお書きになって、平成の新派の舞台となります。 
一人でも多くのお客様に観ていただきたいです。

 

 

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喜多村緑郎(長男・平田幸之助)
来年は新派130年となりまして、その皮切りのお正月公演で山田監督の作品に参加できることは本当に嬉しい限りでございます。 
さきほど久里子さんも仰られたように、お客様に沢山来ていただけることが一番大事です。でないと、くどいようですが"新派はつらいよ"になってしまいます。私も必死に演じさせていただきますので、何卒よろしくお願いいたします。

 

田口守(父・平田周造)
ご覧になったお客様が帰りに心にちょっぴり何かを思って、ほのぼのとした気持ちになってくださればいいなと思います。さきほど監督からのお話にもあったように、実際にあった話だということで、自分のなかでどのように演じたらよいか、いまは頭の中がいっぱいです。とにかく、こんな人たちがいろいろなことを考え、想い、生きているんだなと。絵空事ではなく、リアルに自分たちにも起きるかもしれないお話です。ちょっぴりユーモアも交えて演じていきたいと思います。平成に入って初めての平成時代の芝居でございます。もしかしたら最後の"平成"のお芝居になるかもしれませんが、楽しんでいただけるお芝居を作っていきたいと思います。礼儀と礼節を持って、素直な心で演じていきたいと思っております。

 

瀬戸摩純(長女・金井成子)
茂子は結婚しておりますが専業主婦ではございません。税理士で旦那を養っております。家族の女性陣の中では唯一、嫁の立場ではなく、娘の立場で登場しております。その違いを明確に表現できればと思います。

 

児玉真二(長女の夫・金井泰蔵)
税理士の妻に養われていて、セリフには「髪結いの亭主」なんて出てくる難しい役どころです。山田監督にしごかれながら頑張っていきたいです。

 

石原舞子(長男の嫁・平田史枝)
山田監督とは『東京物語』についで2本目の作品になります。児玉さんと同様、その時は1日に30から50くらいのダメ出しがありまして、頭がパニックになりました。あまり器用ではないので、毎日毎日、少しずつダメ出しを克服しようと頑張りました。監督が仰られていることは、わかりやすく、また愛情もございますので、私たちも真っ直ぐに進んでいくことができます。その監督の愛情が、映画を観た方への感動に繋がるのかなと思います。映画のファンの方も、舞台はどんな感じになるのか、ぜひ観ていただきたいと思います。映画に負けないよう頑張ります。

 

喜多村一郎(次男・平田庄太)
私は、昨年、歌舞伎から新派に移籍いたしました。
そして市川猿琉から喜多村一郎に名前を変えさせていただきました。約2年間、新派に身を置いて感じたことは、本当に家族のような劇団だなと思いました。新派でしか出せない家族の情愛を演じられたらと思っております。父が"男はつらいよ"シリーズの大ファンでして、私も48作全部持ってます。その監督の作品に出られるのは夢のようです。

 

春本由香(次男の恋人・間宮慶子)
山田洋次監督の舞台には初参加です。初めて相手役がいるお役を演じます。平成の舞台ということで、わたしはリアルに平成生まれですので、芝居ではそこを生かしていきたいと思います。

 

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ーー舞台化するにあたり、原作の映画はどのあたりが同じ、あるいは違うのでしょうか?

 

山田監督
根底に流れるテーマは同じですが、舞台としての作り方もありますし、出演俳優が変われば当然テイストも変わります。そこから、新たな発見があるでしょうし、新たな喜びにもなり、そこが観客にも伝わって(映画とは)違う「家族はつらいよ」を観たという気持ちになっていただけるに違いないと思います。

 

 
ーー新派の魅力について 

山田監督
"伝統"という言葉がありますが、それは何かを簡単には言い表すことができません。僕は松竹の大船撮影所で助監督として勉強してました。だけれどその頃は、小津安二郎監督の映画をみて、退屈だと感じていました。(ルキノ)ヴィスコンティなんかを観て、自分はイタリアのネオリアリズムみたいな映画を作るんだと思っていました。ところが『寅さん』を撮って、ふっと気がつくと"松竹の伝統がある映画だ"とか"小津監督の影響がある"と言われて。そのとき感じたのは、けっして嫌な気持ちではなく、そうか、僕自身は意識してなかったけれど伝統が身についていたんだな、と思いまして、今は小津さんの影響があると言われることは名誉に感じています。
同じようなことは新派にも言えるんじゃないかと思います。全体から伝わっている上品さや、雰囲気があって、劇団にいるみなさん自身にも自然に備わってきている。それが新派の魅力なんだと思います。

 

 
ーー山田監督の作品、演出の魅力について

水谷八重子

今度が3本目ですが、前の作品は戦後の昭和を描いていたので覚えがありましたが、今度は平成の現代劇ですので、昭和(時代を描いた作品)とは違うのかな、昭和生まれの女の役ですので、いつもと同じでもいいのかな。これから先生に教えて導いていただきながら役を作っていきたいと思っております。

 
波乃久里子
山田先生と新派とはご縁がないと思っていたんですよ。
ところがある日、弟の十八代目勘三郎が『文七元結』で先生の演出でやらせていただいた時に「すごい人と巡り合ったんだ。お姉ちゃま、とにかく稽古を観に来なさい。新派やっていただかなくちゃダメだ!」と興奮して言ってまいりまして。ちょうどその時に、新派のプロデューサーが山田先生を公演に連れてきてくださって。そこで「小津のような作品だし、やってもてもいい」と仰ってくださって。それで『麦秋』をやっていただくことになりまして、本当にこれぞ新派(の舞台)だと思いました。

  


ーー平成と昭和の時代の違いについて

 

山田監督
富子が30代、40代、50代を経て今という時代をむかえたときに、彼女が影響を受けたり、学んだことや社会、人生に対する考え方が変わってきた。
そんな中でこの人と別れてひとりで生きていこうと、それが私の誠実な生き方なんじゃないかと思うようになったということですね。
時代が大きな影響をあたえたんだろうと思います。昭和だからどう、平成だからどうと、特に意味を持たせるつもりはないですが。

 

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公演は1月2日(火)から25日(木)まで、東京・三越劇場にて上演。