つかこうへい初期の傑作『郵便屋さんちょっと2017 P.S. I Love You』待望の再演!  山中崇史インタビュー

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つかこうへい七回忌にあたった昨年、横内謙介が上演台本・演出を手がけて好評を博した扉座公演『郵便屋さんちょっと』が、1年の時を経て『郵便屋さんちょっと2017 P.S. I Love You』となって帰ってくる。6月21日~25日は紀伊國屋ホール、7月2日には横内謙介の地元、厚木市文化会館 大ホールでも公演を行う。

原作の『郵便屋さんちょっと』は、つか戯曲としては初期のもので、上演される機会も少なかったこの作品を、つかを敬愛する横内が、現代日本を映し込みながら見事に甦らせた。
物語は、まだ郵便局が国営の時代、民営化の波に対抗しながら公僕としてがんばる郵便配達員たちの、可笑しくも愛おしい生き様を描いている。
その舞台で、ロサンゼルス帰りの郵便局長、ジョン・センジロウをパワフルに演じて好評を博し、今回も主役をつとめる山中崇史。彼が再演への抱負を語った「えんぶ6月号」のインタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介する。

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苦しんだからこそ待っていた再演!

──山中さんにとって、つかこうへいという存在は?
僕にとっては雲の上の人でした。演劇をはじめた頃、先輩たちは皆つかさんに憧れていて、僕はよく知らないまま若者演劇を代表する表現だからという感じで、つかさんの芝居を真似て演じたりしていたんです。一度だけ酒席でお会いする機会があって、それまで一緒に騒いでいた北区つかこうへい劇団の友人たちが、つかさんの姿を見ていっぺんに正座した。そのときのカリスマ性が記憶に残っています。
──そのつか作品に初演で初めて取り組んで、いかがでしたか?
僕はここ数年、舞台は1年に一度くらいしか出ていなかったんです。そのせいで演劇脳が退化したんじゃないかと思うくらい、この戯曲の世界に追いついていけなかった。最初は台詞量がすごいなとは思いましたが、そこまで大変だと思ってなくて。でも、いざ稽古になったら台詞が出てこないんです。つかさんの芝居は色々観ていたので、ああいうふうに言おうと思ってもそれができない。先輩たちが「ただ吐けばいいんだから」とか言ってくれるんですが、自分の中で腑に落ちてないので、ちゃんと吐けないんです。固まってしまって稽古にならなかった。
──でも本番では思い切りよく演じているように見えました。
追いついてなくてもとにかくやるしかなかったので。気持ちは100%できていたんですが、表現としては7,8割という感覚でした。ただ、初日の前なんか本当に幕が開けられるかというくらい悩んでいたのに、千穐楽が終わったら、またやりたいなと。再演の話もいただいてましたから、早くやりたいと。
──苦しんだ分だけ何かが残ったのでしょうね。
当時は、体に詰め込んだ台詞とか感情を全部見せるだけで1回1回が終わるという日々で、ただ走り抜けた感じでした。でも今、改めて台本を読んでいると、あれをやろうとかこれをやろうとか思いつくんです。初演では全然思いつかなかったのに。ですから再演できて本当によかったです(笑)。

横内さんの作品で人としてどうあるべきかを

──山中さんは扉座に入団して22年目ですが、早くから活躍していましたね。
最初に良い役をもらったのは代役で、横内さんの戯曲をマキノノゾミさんが演出した公演でした。当時は自信過剰で生意気でしたから、「よし、来たな!」と思って稽古に入ったら、何をやってもマキノさんから「ダメ、ダメ」と言われて、伸びていた鼻をポキンと折られました。今思えば自分勝手な芝居してたんだと思います。
──扉座にいたことで一番良かったのはどんなことですか?
僕は横内さんの作品をやっていたおかげで、人として間違ったほうに行かなかったと思ってるんです(笑)。人としてどうあるべきかを、演劇の中で教わっている気がします。横内さんの作品に書かれているような人間が好きで、人は好きなものになろうと自然に思いますから。
──横内さんは善悪含めて人間を愛して描きますね。その横内さんが師と仰ぐのがつかさんで、今それを演じているわけですが。
幸せだと思います。だからこそ初演は、応えきれていないという不甲斐なさがあったので、今度こそちゃんと応えたいです。いつも「つかさんの芝居はもっとカッコいいんだよ」と叱られていましたから、今度こそカッコよくやりたいですね。

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やまなかたかし○埼玉県出身。95年劇団扉座入団。以来、劇団の中心的俳優として活躍中。97~99年まで東京FM『ミリオンナイツ』のDJをつとめる。テレビ朝日「相棒」シリーズの芹沢慶二役で人気になり、『相棒─劇場版─』(東映)シリーズにも出演。最近の出演作品は、TVはドラマスペシャル『検事の死命』(テレビ朝日)、映画は『王妃の館』(東映)など。最近の劇団公演は『アトムへの伝言』『いとしの儚~100days Love~』。


〈公演情報〉
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幻冬舎PRESENTS つかこうへい×扉座シリーズ第5弾
『郵便屋さんちょっと 2017  P.S. I Love You』
原作◇つかこうへい
上演台本・演出◇横内謙介
出演◇岡森諦 中原三千代 有馬自由  山中崇史 犬飼淳治 高橋麻理 ほか
●6/21~25◎紀伊國屋ホール、
●7/2◎厚木市文化会館 大ホール
〈お問い合わせ〉劇団扉座 03-3221-0530(平日12:00~18:00)